海を育てるという発想。藻場造成は“海の農業”だ。

※この記事は旧サイト(マリンハビタット壱岐)の記事をリライトしています。

「藻場造成」という言葉を、どれくらいの人が知っているでしょうか。

簡単に言えば、海藻を育て、海の生態系を取り戻す取り組みです。

海藻は、ただの“草”ではありません。

魚やイカの産卵場所となり、小さな命を育てるゆりかごとなり、そして海全体のバランスを支える存在です。

さらに、陸から流れ込む窒素やリンを吸収し、海を浄化する役割も担っています。

しかし今、壱岐島をはじめ、日本全国、そして世界中で藻場が失われています。

この現象は「磯焼け」と呼ばれ、海は“砂漠化”していきます。

かつて命であふれていた海が、静かに、何もいない海へと変わっていく。

では、なぜこのようなことが起きているのか。

私たちが着目しているのは、「鉄」の存在です。

かつては、森が長い年月をかけて生み出したフルボ酸(腐植酸)と鉄が結びついた「フルボ酸鉄」が、川を通じて海へと運ばれていました。

この“森からの栄養”が、植物プランクトンや海藻の光合成を支え、豊かな海を育てていたのです。

つまり、森と海は、ひとつの循環の中にあった。

しかし現代では、その循環が弱くなっている可能性があります。

そのため、漁師の方々が植林活動を行うのも、森から海への栄養供給を取り戻すためです。

では、その供給を待つしかないのか。

私たちは、そうは考えません。

私たちが取り組んでいるのは、森の栄養を“直接、海に届ける技術”です。

独自に開発・特許取得した技術により、フルボ酸と鉄を安定的に供給することが可能になりました。

フルボ酸は、いわば鉄を海へ運ぶ“運び屋”のような存在。この仕組みを人工的に再現することで、海の中に“育つ環境”をつくり出します。

さらにこの技術は、リーフボールだけにとどまりません。

海や川に設置されるコンクリート構造物に吹き付けたり、練り込んだりすることで、インフラそのものが「環境再生装置」になる。そんな可能性も広がっています。

リーフボールの内部には、すでに森の栄養が組み込まれています。

そこに海藻の胞子(種)を撒く。

これはまさに、「海の農業」です。

ただし、ここで重要なのは技術だけではありません。

自然と人間、開発と環境。

どちらか一方を否定するのではなく、どう共存させるか。

道路や港があるからこそ、私たちの暮らしは成り立っています。

一方で、自然を守る視点も欠かせません。

だからこそ必要なのは、対立ではなく対話。

双方にとって最適なバランスを見つけることだと、私たちは考えています。

海を守るのではなく、海を“育てる”。

私たちはこれからも、藻場造成を通じて「海藻牧場」を広げ、もう一度、命が循環する豊かな海を次の世代へつないでいきます。

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